2015年10月7日水曜日

「魔術的リアリズム」に関する覚書①


 今日ではラテンアメリカ文学の専売特許ともみなされるようになってしまった、「魔術的」リアリズム。その起源はドイツにある。

それは、表現主義と抽象全盛の時代に突如として登場してきた異様なリアリズムであった。大気が突然アウラを失って、事物は真空のなかに置きざりにされる。世界関連から切りはなされて、いきなりそこにあるもの。その魔術的輝き。日常現実のごくありふれた対象を描きながら、当の事物にこの世の外の、いわば世界関連外の光を照射して、事物を「形而上的妖怪的」(キリコ)空間のなかに立ち上らせるリアリズム。(種村季弘『魔術的リアリズム』、筑摩書房、2010)

同書は、両大戦間の1920代ドイツに突如立ち現れ、そして消えたリアリズムについて論じたものである。そのリアリズムは「ノイエ・ザハリヒカイト(新即物主義)」あるいは「魔術的リアリズム」と称された。

 1920年代のドイツは社会的・経済的不安を抱えつつも、電気の普及に伴い、文化的には隆盛をむかえた時代でもあった。それらを象徴するドイツ表現主義の映画が、『カリガリ博士』と『メトロポリス』である。

 こうした表現主義(あるいは印象主義)に対する反動として、現れたのが「メランコリーの芸術」たる「ノイエ・ザハリヒカイト」であり、「魔術的リアリズム」であった。

続く……



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